現場の「想定外」を無くすために。電気設備技術者がHardwire Labを始めた理由
あの時の「想定外」を覚えていますか?
施工間際、竣工間際に背筋が凍った経験はないでしょうか?
「図面では納まっているはずなのに、ダクトとケーブルラックが干渉している」 「計算書のブレーカー容量と、盤図、試験帳票の記載が食い違っている」
現場で起きる「想定外」は、私たち施工管理や生産設計の責任として処理されます。深夜まで続く図面の修正、協力会社への頭の下げ直し、手戻り工事のコスト…。
私自身、電気設備の生産設計・施工の現場に身を置いてきました。だからこそ、痛いほど分かります。私たちの仕事は、常に「不整合」という見えない爆弾処理の連続であることを。
「なぜ、最新ツールを使っているのに、最後はアナログな目視確認に頼らなければならないのか?」
その理不尽な問いへの答えを出すために、私はHardwire Labを立ち上げました。
BIMの「理想」と、現場の「断絶」
業界では「建設DX」「BIMによるフロントローディング」という言葉が飛び交っています。しかし、実務の最前線はどうでしょうか。
多くのツールは「見た目の3Dモデル」を整えることには長けています。しかし、どれだけモデルを綺麗に作り込んでも、契約図書や現場の共通言語は、今なお「2次元図面」です。 モデルを一箇所修正すれば、系統図を直し、盤図を直し、計算書も直す……。この、ひたすら繰り返される「転記」と「整合」のプロセスにこそ、ヒューマンエラーの温床が潜んでいます。
そもそも、電気設備の本質は「論理的な接続」にあります。 既存のツールが軽視してきたこの「論理の整合性」こそが、現場の技術者がプロとして妥当性を担保し、最後まで完遂すべき領域ではないでしょうか。
多くのITベンダーは「ボタン一つで自動化」と謳います。しかし、現場の複雑な納まりや、施工段階での急な変更対応(変更工事)まではカバーしてくれません。なぜなら、彼らは「コードのプロ」であっても、「電気設備のプロ」ではないからです。
Hardwire Labのアプローチ —— 泥臭い「確実性」を
私たちは、プログラマーとしてではなく、一人の技術者としてコードを書いています。 私たちが目指すのは、派手なプレゼン資料を作るためのツールではありません。
- 変更があっても、モデルと系統図が常に同期している安心感。
- クリック一つで、数千箇所の回路情報を正確に監査できる確実性。
こうした、地味だけれども現場の技術者が「安心して仕事をする」ための機能。それを、腰道具のように手に馴染む形で提供したいと考えています。
私たちのビジョンは、 現場の「想定外」を、デジタルの「想定内」にする。(Make the Unforeseen, Foreseen.)
着工前にすべての不整合を潰しきり、現場では「組み立てるだけ」の状態を作る。それが、私が技術者として到達したかった景色です。
なぜ、「Hardwire」なのか。
社名の「Hardwire(ハードワイヤ)」とは電気設備の文脈で、物理的に直接配線(直結)する行為を指します。
設計から施工、現場管理に至るまで。現在は分断され、人の手による翻訳(転記・解釈)を必要としている工程を、まるで一本の回路のように論理的に繋ぎ合わせたい。 あやふやな解釈が入り込む余地のない、堅牢で確実なワークフローを構築すること。 それが、結果として現場の「想定外」を消し去ると信じています。
最初の挑戦(系統図自動化)と、パートナー募集
Hardwire Labはまだ走り出したばかりの小さなチームです。 しかし、解こうとしている課題は、業界全体が長年抱えてきた難問です。
現在、私たちは最初のプロダクトとして「Revitモデルと完全連動する系統図自動作図ツール」を開発しています。これも、私自身が実務の中で「最も整合性の担保に神経を使い、かつヒューマンエラーのリスクを排除しきれない」と感じていた作業をゼロにするための挑戦です。
まもなく、パブリックプレビュー版として皆さんにお披露目できる予定です。 もし、現場の「不整合」や「単純作業」にウンザリしている方がいれば、ぜひ私たちのツールを試してみてください。そして、忌憚のない意見をぶつけてください。
現場を知る皆さんと共に、電気設備のワークフローを「あるべき姿」へ書き換えていきたい。
これから、Hardwire Labをよろしくお願いします。